2018年度 ネオアジア・ネオジャポン-日本の伝統美と現代アートの未来―

 

■March.2018 Japan-Indonesia INTERNATIONAL FRIENDSHIP EXHIBITION 2018

■March.2018 Japan-Indonesia INTERNATIONAL FRIENDSHIP EXHIBITION 2018

"NEO ASIA NEO JAPON 2018”"in Gallery 212 ISBI Bandung ,Indonesia (2018 © aaca Art and culture exchange project)

"NEO ASIA NEO JAPON 2018”"in CREDO Art Studio , Jakarta (2018 © aaca Art and culture exchange project)

《ネオ・アジア・ネオジャポン-日本の伝統美と現代アート未来》

『 秘すれば花なり 』この言葉は,日本の室町期,世阿弥(1363-1433) の『風姿花伝』に書かれた一説である。世阿弥は,観阿弥を父とし,申楽観世座の二代目太夫として,今日の能の基礎を確立した人物としてよく知られている。『風姿花伝』 は,世阿弥が記した「 能の伝書」 であり,観阿弥の教えを基に,能の美学を「花」という言葉に比喩し,幽玄の世界をはじめ,能の神髄を芸道の視点から解釈を加えた,日本最古の演劇論とされます。

《能面》は,日本の伝統芸能の一つである「能楽」に使用される仮面です。日本における「能楽」の起源は古く,中国をはじめ,アジアの西域からシルクロードを経て伝来した「散楽」という芸能と土着の文化が融合し,日本各地へ広がったとされます。平安期(794‐1185)「散楽」は,土着の芸能と融合し,「田楽」「猿楽」と称され,「田楽」は,耕田儀礼の儀式と結びつき洗練されていき,一方で,「猿楽」は,寺社との結びつきを強め,座を結し,法会,祭礼の儀にその芸能を披露した。鎌倉期(1185 ‒ 1333),「猿楽」は,「猿楽の能」と呼ばれるようになり, 室町期(1336 ‐ 1573),足利義満の庇護のもとに観阿弥, 世阿弥父子によって「能楽」として大成されました。

《能面》も同様に,「能楽」が大成した室町期から安土桃山期に打たれた面を《本面》と呼び,現在まで演能者と共に歩み,多くの面が造られてきました。《能面》の種類は,約250 種類を数え,能の演目にあわせて使用されています。《神面》《尉面》《女面》《修羅面》《物狂い》《鬼》など,これらは,古くより日本で創り出されてきた。能面の中に写し出された姿は,日本人の造りだした「伝統の美」に他なりません。
 
 本展は,共立女子大学名誉教授であり,アジア美術文化協会 理事を務める 水谷 靖(みずたに やすし)氏をバンドゥンの会場へお迎えし能面作品およそ20点の展示に加え,日本の写真家,デザイナー,イラストレーター,アニメーターおよび美術教育現場で活躍する若き作家11名 ,日本の大学・美術系大学・専門学校に在籍する学生12名, ならびに公募で選出された都立高校生7名,総勢31名の多彩な作品50点が展示されました。

 そして,国立インドネシア文化芸術大学ファインアート学科とコラボレーションによる,1.シンポジウム 2.アーティスト・トーク 3.ワークショップなどのイベントが実施されました。本展覧会のメイン・ビジュアルとなる《能面》は,長年,日本の美術教育界で活躍し,現代美術の彫刻家として活動なさってきた水谷靖 氏が制作した作品となります。

 また,ジャカルタの クレド・アートスタジオにおいては,インドネシアと日本の現代アーティストと学生たちによるおよそ100点のコラボレーション展示とアーティスト・トーク,ワークショップを実現することができました。

 これらは,主催者のアグス・B・ヤヌール氏(Mr.Agus ,B,Yanuar),ホーム・スクリーリング・プルサダ(Home Schooling Persada)主催者,ラフィタ・タントリ・ヤヌアール氏(Ms.Revita Tantri Yanuar),クレド・アートスタジオ(Credo Art Stidio)のエドウィン・マカリム・ヤヌアール氏 (Mr.Edwin Makarim Yanuar),デデ・ダダ・アートスタジオ(de Dada Art Studio)のチャンドラ・マウラナ氏(Mr.Chandra Maulana),そして,国立インドネシア文化芸術大学ファインアート学科教授のアグス・チャハヤナ氏(Mr.Agus Cahyana )とアート・リンク(ART LINK)に賛同していただいた国立インドネシア文化芸術大学ファインアート学科(Students from ISBI Bandung FSRD)の学生たちの協力のもと実現し,日本のアジア美術文化協会(AACA),ギャラリー明日夢アートスペース(Gallery Asumu Art Space),森羅万象実行委員会(Committee of Shinrabanshou)のアーティスト,学生らの作品の素晴らしい作品があったからです。

 本展は《日本の伝統美と現代アートの未来》について対話し,《アジアにおける伝統美と現代アート》について再考する試みでもあります。この展覧会を通じて,両国の若きアーティストたちが創作する現代アートの作品に秘められた才能が開花し,また,今後,インドネシアと日本の友好の輪が広がることを祈念します。

 最後に、ご協力を賜りました皆様に,この場を借りて心より御礼申し上げます。

【 ネオアジア・ネオジャポン 代表キュレーター /  水田 泉 】

2018年03月23日